天職とは
あなたは、仕事を楽しめていますか?
もし、仕事が嫌でしかたないなら、一度ゆっくり人生の方向性を、考えたほうがいいかもしれません。
あなたは一日の大半を働いて過ごしています。仕事を楽しめるとは、日々の生活を楽しめること。いくらお金や地位があっても、日々の生活が楽しくないのなら、幸せな人生とはいえません。
天職、やりたいことの基本は、仕事が楽しいと感じることです
全年齢を比較しても20代の転職が年々増えています。これは仕事を楽しみたい人が増えたとも言えるでしょう。
働くことに対して、お金や地位ではなく「楽しむ」という、こころの充実を求めている。世の中の働く人の価値観が、本当に大きく変わってきていると感じます。
いまの若い人たちがそう思うのは、当然のことだと思います。
給料は低くても、ストレス経費の少ない仕事のほうが、豊かな生活じゃないでしょうか?
仕事とは、「嫌なことを我慢する代わりに、お金をもらうもんだ」みたいなことを言われることがあります。
一見これは、説得力があるように感じます。でも、嫌なことを我慢して得たお金がストレス発散で消えていっているのでは、なんのための我慢なのかわかりません。
ただ生活のために我慢してお金を稼ぎ、そのお金も何か大切なことに使うのではなく、ストレス発散に消えていく。そんなことで、幸せになれるはずがありません。だから働くことが、むなしいのです。
あなたの1か月のストレス経費。いくらくらいになっていますか?
いまの仕事を続けて、幸せな未来が想像できますか?
「いまの仕事をがんばればいい」の罠
いまの仕事が辛い、やりがいを感じないという若者に対して、「目の前の仕事をがんばれば、いつかそれがやりたいことになる!」「入社したからには、3年は絶対に辞めてはいけない!」世間では、そう言われることが多いです。
いまの時代、本当に3年で辞めてはいけないのでしょうか? 本当に目の前の仕事をがんばり続ければ、それがやりたいことになるのでしょうか?
はっきり言って「NO!」。これは仕事が辛い、やりたいことを見つけたいと悩んでいる人に対して、あまりに安易なアドバイスだと思います。
まわりを見渡してみたところで、本気で仕事に取り組んでいる上司も、そこからやりたいことにつながった先輩も、実際にはほとんどいないように感じます。
いるのは、ただ食っていくためと機械的に働いている上司や先輩たち。
そんな彼らの背中が見えるからこそ、「将来、あの人たちみたいになるのは嫌だ」「この会社でがんばり続けても、幸せになれそうにない……」。そう感じて、若者たちは、いまの仕事を辞めたいと思うのです。
「いつかやりがいになる」では解決しない
心理学では、期待理論といって、「がんばったらいい結果が待っている」という期待がなければ、人のやる気は出てこないという考えがあります。
期待理論から考えても、未来の自分像である上司や先輩が暗い顔で働いていたなら、「この仕事でがんばり続けよう!」と思えなくても当然です。
また、時代が大きく変わったというのもあるでしょう。終身雇用が終わり、転職が当たり前になった昨今、いまの仕事を続けても幸せになれそうになければ、辞めたくなるのも無理はありません。
だからこそ、「いまの若者には忍耐がない。とりあえずどんなに苦しくても3年は続けろ。しんどくても、いまの仕事をがんばっていれば、いつかそれがやりがいになるんだ…!」と上から目線で言ったところで、仕事に悩む若者のこころには響かないのです。
若者たちはこころの中で「それができないから、悩んでいるんだよ」と言い返すだけです。
「最近の若者は……」とか、そういうレベルを超えて、よりよく働くとは何か? どうすれば、よりイキイキと働くことができるのか? 幸せに働くとは? そこまで掘り下げて、根本的に考える必要があると思います。
いま辛いからこそ、幸せに働くことを真剣に考えてみませんか?
「いまの若者は我慢もせずにすぐ辞める」、なんて言う人もいますが、それは大間違い。
辞める人の話をしっかりと聞いてみれば、その人なりにしっかりと思い悩み、苦しみ考えてから、辞めるという決断をしていることがほとんどです。
だから、「もっとがんばればいい」とか、「我慢が足りない」なんてアドバイスは、苦しんでいる当人を余計に追い詰めるだけです。
ピンチはチャンス。追い詰められたからこそ、思い切った決断ができるのです。
とはいえ、いまの仕事が辛い人たちは、「人生に無駄なことなんかない。「ピンチはチャンス!」と言われたところで、納得できないかもしれませんし、いまは想像できないかもしれません。
でも、それでもいつの日か、自分が満足できる仕事に就けたとき。過去を振り返って、「あのとき本当に辛かったからこそ、真剣に働くことについて考えた。いまはいいきっかけになったと思う」、そう思える日がきっときます。
10年後のために、自分を変えるための努力、ちょっとだけやってみてはどうでしょう?
10年後、幸せになれますか?
「やりたいことや好きなことを仕事にしたほうがいいとわかってるけど、でも、つい安定も求めてしまって。やっぱり、いままでと同じような職種で、いままでどおり無難に転職したほうがいいのかなって思ったり……。
いままでと同じ生き方をして、同じような仕事をずっとしてたら、10年後、どうなってると思いますか?
きっと、いまと同じように、仕事で悩んで後悔してると思います
自分の生き方が変わらないなら、自分の人生も絶対に変わらない。いままでと同じ生き方をしたら、いままでと同じことで悩み続けます。
いや、年を取るだけ、10年後も同じことで悩んでいるほうが、ある意味、悲惨かもしれません。
僕たちは、いままでと同じことをくり返せば不幸になると、こころのどこかでうすうすわかっていながら、なかなか変わろうと思えません。このままじゃダメだとわかっていながら、つい同じ生き方を選んでしまう。
でも、10年後の自分をイメージしてみたとき、いま変わらなければ、もっと悲惨になると気づく。未来の悲惨さに気づいたとき、未来の自分自身のために、ちょっとだけ努力しようと思えます。
いままでどおりの生き方、働き方で、あなたの10年後はどうなっていますか?
いまの仕事のためにゆとりを失っているなら、まずはこころと時間に余裕をつくりましょう
こころと時間に余裕をつくる
やりたいことを見つけるには、自分の生き方や働き方を、根本から見つめ直す必要があります。でも、過労やストレスでこころも体も疲れ切っていては、そのための余裕がありません。
こんな人の場合、働きながら転職活動をするのは、時間的にも精神的にも、ほぼ不可能。最悪なのはここで、「次の仕事が見つかってから辞めたほうがいい、と言われたんで……」と、辞められなくなるケース。
「次が見つかってから辞めたほうがいい」。確かにそれは正論です。でも、それを真に受けすぎると、働きながらやりたいこと探しや転職活動をする余裕がない場合、永遠にいまの仕事を続けることになります。
こうしたケースの場合、2段構えが必要です。
- まずは余裕の持てる仕事に転職する
- それからやりたいことをゆっくり考える
実際に、こういう余裕のない人が突発的な家庭の事情などで転職、退社をした場合、一気に状況が改善することがあります。会社を辞めてこころに余裕ができると、自然とやりたいことが見つかることが、結構あるんです。
もちろん、いまの仕事を続けながら、やりたいこと探しや転職活動ができれば、一番いいと思います。ただ、長時間労働やストレスで、そう理想どおりに動けないことも多い。そういう場合は、一度、余裕の持てる仕事に転職して、そこでゆっくり、生き方・働き方について考えるのも、ひとつの方法です
どんな人でも、会社を辞めるのは勇気がいります。それがたとえ、嫌な会社であったとしてもです。特に、「辞めるなら次が見つかってからにしろ」、この言葉にとらわれすぎると、つい惰性でダラダラと嫌な仕事を続けてしまいます。
忙しすぎる人の場合、いったん会社を辞めて、こころと時間にゆとりをつくらないと、人生設計の時間をつくれません。こころに余裕がない状態で、自分の将来をいくら考えても、幸せになることは難しいのです。
リスクを受け入れて、ほんの少し善く生きて、人生を充実させませんか?
■ほんの少し「善く生きる」ために必要なもの
人生を変えたいと思っても、なかなか自分では変われない。人間ってそんな弱さがあるものです。
善く生きるということは、困難やリスクを乗り越えて、自分が正しいと思う道を貫くこと。それはなかなかに難しいです。
何より、それまで平凡にリスクを避けて生きていた人が、リスクや困難に立ち向かうという、違う生き方を選ぶのは、誰にとっても怖いことです。善く生きるのは大変です。困難やリスクもある。だから、ほんの少しの行動でいいのです。
あなたは人生の大半を、働いて過ごします。
嫌な仕事をずっと続けて、人生の大半を苦痛にしたいですか?
あなたは「人の役に立つ仕事」「社会に意味のある仕事」が、できていますか?
こころを満たす働き方とは?
いまの時代は安定していい給料がもらえる仕事よりも、自分のこころを満たす仕事を求めるようになってきている、とお話ししました。
こころを満たす仕事とは、実際のところ、どのようなものなのでしょうか?
こころを満たす仕事には、次の3つの要素があります。
- 意味への意志…自分の仕事には、意味があると思える感覚
- 「好き」という感情…内発的動機づけ、 やりたいからやるという動機
- 自己決定要因…自分の頭で考え、自分の意志で決定できること
意味への意志 ~仕事に意味を感じるか
「意味への意志」というのは、自分のやっている仕事、やろうとしている仕事には意味がある、と感じられることです。「本当にこの仕事に意味が あるだろうか?と思いながら1日8時間以上働き続けることは、かなりの苦痛です。
精神科医のヴィクトール・E・フランクルは、人間は自分の人生や、やっていることを意味あるものにしたいという、意味への意志を持っていると言いました。
そして、意味がないと感じたとき、精神的に病み始めるとも言います。
「何故生きるかを知っている者は、殆んどあらゆる如何に生きるか、に耐えるのだ」と言います。
(『夜と霧』フランクル/霜山徳爾訳・みすず書房刊)
つまり、自分がなんのために生きているのか、自分の人生にはっきりとした目標や意味を持っている者は、ほとんどあらゆる辛い出来事に耐えることができる、ということです。
仕事についても同じです。自分の仕事になんの意味があるのか、はっきりとした答えを持ち、自分の仕事に人生をかける価値があると思っている人は、ほとんどあらゆる辛さに耐えることができるでしょう。
逆に、自分の仕事にはなんの意味もない。この仕事で喜ぶ人など、誰ひとりとしていない。ただ、会社での体裁を保つため、ただ、いろいろな都合を合わせるために、机に座っている。そう思った瞬間、ちょっとした嫌な出来事であっても、耐えられなくなってしまいます。
「この仕事には意味がある」。そう思えることは、「なぜこの辛いことに耐えないといけないのか?」という問いに対する答えを出すことになり、仕事のストレスに対する耐性を圧倒的に強化することでしょう。
「好き」という感情 ~本当にやりたいことか~
心理学では一般的に、内発的動機づけといって、やっている作業そのものが楽しいことや、好きだからやっていることのほうが、高い集中力といい結果を出すことがわかっています。
自分の内側からわいてくる、好きだからやりたいという気持ち。好きなことを仕事にしているからこそ、こころを満たす働き方になる。
そもそも、当たり前のことですが、嫌いなことを仕事にして、こころが満たされるわけがありません。
いくら意味のある仕事だと自分で思っても、嫌いなことを仕事としてやり続けるのは、やはりかなりの苦痛でしょう。
たとえば、いくら介護の仕事に意味を感じていても、お風呂や下の世話をするという、介護の仕事内容そのものが嫌いならば、やはり長続きしないでしょう。
意味があると思えるだけでなく、自分の好きなこと、やりたいことをやる。それも、こころを満たす働き方にとって、とても重要なことです。
自己決定要因 ~自分で考え、決定しているか~
最後に、「自己決定要因」というものがあります。エドワード・L・デシという心理学者は、人間はただ人からやれと言われてやることよりも、自分で考えて決めたことのほうが、内発的動機づけを高めると言いました。自分の頭で考え、自分の意志で行動する、そのときに感じる気持ちのことを、「自己決定感」と言います。
いかに意味のある、自分の好きな仕事であったとしても、まるで操り人形のように、上司に言われたことを言われたままにやるだけでは、やはりやりがいを感じることはないでしょう。
自分の頭で考えて、自分が正しいと思うやり方でやる。これも、こころを満たす働き方にとって、非常に重要なことです。
これら3つの「意味のあること」「好きなこと」「自分の頭で考え、決定できること」はバラバラに存在しているのではなく、お互いに深く関係し合っています。
ですから、3つのうちひとつの要素が好転すれば、ほかの要素もつられて好転することが、よくあります。
特別な運命・才能の持ち主じゃなくても、ちょっとの行動で、天職に一歩近づきます
「好きなこと」探しが天職への近道
たいていのケースでは、好きなこと、やりたいことが見つかれば、意味の感じられる仕事へとつながっていきます。好きなことを仕事にするためには、自分からいろいろと行動する必要があり、自己決定要因、本人の自立性も高まっていくのです。
だから、こころを満たして働くためには、好きなことを妥協なく追求することが、ひとつの基準になります。
「意味のあること。好きなこと。自分の頭で考え、決定できること。この3つがこころを満たす働き方の要素だ」と言うと、「なんだ、そんな当たり前なことだったら、言われなくたって知ってるよ」、そう思う人もいるかもしれません。
確かに、これら3つの要因は、昔から言われている、ある意味当たり前のことばかりです
でも、あなたのまわりに、この当たり前のことをできている人が、いったいどれらいいるでしょうか?。
当たり前のことを当たり前にやる。とっても難しいことです。
人間って、頭ではわかっている当たり前のことすら、できないことも多いのです。
特にいままで、「好きなことを仕事にするなんて、ドラマや小説の中の話」と、現実的に考えてこなかった人にとっては、とてもハードルが高く感じるかもしれません。
普通の人にとっては、好きなことを仕事にするなんて、特別な運命や才能のある人だけができること、と思えてしまいます。
だから、まずは努力目標でかまいません。いまよりちょっとだけ、こころを満たす仕事に近づけるよう、行動してみませんか? たとえ完璧にできなくても、ちょっとでも行動してみれば、すがすがしい気持ちになれるはずですよ。
まとめ
天職の3つの要素を満たすプロセスモデル
- ①好きなことを見つける。
- これを仕事にしたい!
- せっかく好きなことを仕事にするなら、人の役に立つ②意味のあることをしたい!
- どうすれば実現できるか自分の頭で考える
- ③自分の意志で決定し、行動する!!
好きなことを仕事にしていく過程で、意味のあることや、自分の頭で考え決定することも、自然と満たしている、これが天職。