RIASEC

自分の職業関心や能力がどちらを向いているか(どの職業に関心があり、能力適性が高いか)を大きく把握しておくことは大切なことです。

そこで今回は職業適合性について紹介します。

職業適合性(マッチング)

自分の特性(能力・適性・興味・希望)と仕事の特性(必要能力・労働条件・将来性)を調べ、類型化してあてはめていく考えが基本でした。

自分のタイプと仕事のタイプがマッチ(適合)していれば、仕事に満足感、大きな成果をあげるという考えです。

求めているものを確認するのには、自分が何に関心があり、どういうことができるのかなどを知る、つまり「自己理解」を深めることが基本です。

またこれから応募する仕事の内容と、その仕事に必要な能力をしっかりと把握する「仕事理解」も大切です。

就職や転職を考えはじめたときの仕事のイメージは漠然としたものであることが多く、この状態では本当に自分にあう仕事や会社にはなかなかたどりつけません。それを具体的なものにしていくのが、「自己理解」であり「仕事理解」であるわけです。

「自己理解」とは

求職者の自己理解を深める指標としては、以下のものがあります。

  1. どんな仕事に興味・関心があるのか
  2. どんな能力を持っているのか
  3. どんなことに価値を見出しているのか
  4. どういう労働条件等を求めているのか
    上記4点をすべて満たされればよいのですが、大概はそのいくつかをそれなりの満足度で仕事を選ぶことが多いのです。

「自己理解」の方法

最も大切なことは、興味・関心、得意な能力、価値観(何を大事に生きたいのか等)。そして志望する動機を洗いだすことです。迷っていること、自信がないことを具体的にして自己理解を深めます。

適性検査によるもの

具体的に自己理解が深まらない場合に、適性検査を活用してみる方法もあります。

しかし必ずしも適性検査により類型化したものがすべてとは限りません。また人間は成長していくものであり、その時点の適性だけで選択することのぜひもあり、適性検査結果はあくまでも参考として活用してください。

興味・関心の確認

「どんな職業に関心があるのか」は、「職業興味・関心チェックシート」を使用するとおおむねわかります。自分の職業に対する関心の大きな方向性を知ることは大切です。
(たとえば、「人」に関心があるか「物」に関心があるかでは職業選択もすべて違ってきます)

VPI(職業興味検査)活用し、自分で質問に答えてみます。その結果をホランドの六角形モデル(RIASEC)に記入してつなぐと、自分がどんな領域の職業に関心があるかが わかってきます。

「VPI(職業興味検査)」とは、職業に関する興味領域を6つに分類し、自分がどの領域に関心が高いかを知ることにより、より自分に適合した業選択ができるための検査です。

職業興味の6領域(RIASEC)

各項目2点満点の計10点で、各項目の合計点を各々の該当する位置にプロット(点でグラフに描き入れる)し、線で結ぶと自分の関心の高い項目がよくわかりますす。

現実的興味領域(Realistic:R領域)

機械や物体を対象とする具体的で実際的な仕事や活動の興味領域

【道具を扱うこと/物を作ることに興味があるタイプ】

現実的タイプの人は、道具を使って物を作ったり、乗り物を運転して作業をしたりすることに興味がある人です。
道具や乗り物を使って仕事をして、物的に成果が見えたり、ゴールがはっきりしている仕事を好むということです。また、自分の力で成果をコントロール可能であることも重視する傾向があるといえます。

【キーワード】
物作り 機械操作 目標設定力 器用 几帳面 集中力

  • 物を作る仕事:生産技術、熟練技能
  • 物を扱う仕事:工学関係
  • 動・植物に触れる仕事:動植物管理
  • 体を動かす仕事:手工芸技能
  • 運転する仕事:機械・装置、機械管理、乗り物

水道・ガスなどの鉛管工、飛行機のエンジニア、電気エンジニア機械操縦、カメラマン、製図者などその他のサービス業

研究的興味領域 (Investigative:I領域)

研究や調査のような研究的、探索的な仕事や活動の興味領域

【一人でコツコツと一つのことに深く向き合うタイプ】
研究的タイプの人は、一つの分野のエキスパートを目指しているような人です。
具体的、抽象的問わず、自分の興味がある分野に関して徹底的に調べ、成果をまとめていく人です。研究者として誇りを持ち、研究に没頭するために、人に興味がないといわれることもあります。

【キーワード】
論理的 集中力 数理的 合理的 几帳面 自分に厳しい

  • 研究する仕事:物理科学、医学
  • 調査する仕事:動物・植物生理学
  • 考える仕事:生産工学、数理
  • 分析する仕事:統計学
  • 情報を集める仕事:情報処理

科学者、物理学者、数学者など科学者が多い、技術専門家として図書館の館員、技師、コンピュータのプログラマー、電気技師など

芸術的興味領域(Artistic:A領域)

音楽、芸術、文学等を対象とするような仕事や活動の興味領域

【表現すること/新しいものを創りだすことが好きなタイプ】

芸術的タイプは、自分の感性を作品として表現したり、既存のものにとらわれず、新しいものを創ること興味を持っている人です。美術や音楽、文学、デザイナーなどに興味を持っています。自分の感性を大切にする人が多く、自分の内面に向き合うことのできる人が多いのも特徴です。感受性が強く、自分の気持ちや外からの刺激に対して敏感になりやすい一面もあります。

【キーワード】
独創的 想像力 繊細 感受性の強さ 独自性

  • 創造的な仕事:美術、彫刻、工芸
  • アイデアを生み出す仕事:音楽・演劇
  • 表現する仕事:舞踏関係、文芸
  • 感性をいかす仕事:演出関係
  • デザインする仕事:デザイン、イラスト

画家、アーチスト、デザイナー、音楽家、編集者、ライターなど

社会的興味領域(Social:S領域)

人と接したり、人に奉仕したりする仕事や活動の興味領域

【人に教える/援助することに興味があるタイプ】

社会的タイプは、人に何かを教えたり、人を助けたりすることに興味を持っている人です。人の役に立ちたい、満足してもらいたいという一面も持っています。相手の気持ちを理解し、順応していくことができる人です。自分の気持ちより相手の気持ちを大切にしすぎてしまい、抱え込む可能性もあります。また、利益などの数字を追うよりも目の前の人に寄り添ってあげたいと考えてしまう傾向にあります。

【キーワード】
責任感 洞察力 伝達力 親切 ホスピタリティ

  • 人と接する仕事:販売関係
  • 人に奉仕する仕事:社会奉仕
  • 人に教える仕事:学校教育・社会教育
  • 人を助ける仕事:医療・保険関係
  • 人を支える仕事:社会奉仕

教育関連では教師、学校の事務職員、社会福祉関係では、ソーシャルワーカー、カウンセラー、看護婦など

企業的興味領域(Enterprising:E領域)

企画・立案したり、組織の運営や経営等の仕事や活動の興味領域

【全体を意識することを好むタイプ】

企業的タイプの人は、広く物事をみて、判断することに興味があります。また、チームの中で目標を達成していこうとする人です。特に、指示出したりしてチームの力を高めることに興味があります。自分がリーダーとなってチームを引っ張ったり、チームの中で主体的に仕事を作りだしたりしていくことが得意です。ただし、チーム全体や、自分の主体性を重視するあまり、個々の不満に気づけない面も出てくる可能性があります。

【キーワード】
企画 組織作り 指導 説得 リーダーシップ チーム成果意識 俯瞰

  • 企画する仕事:広報、宣伝、営業
  • 組織を運営する仕事:経営管理関係
  • 人や社会を動かす仕事:報道関係
  • リーダーシップを発揮する仕事:
  • 監督する仕事:管理的事務関係、財務管理

人事部、営業部など企業の管理職、保険・不動産・車などのセールス

慣習的興味領域(Conventional:C領域)

定まった方式や規則、習慣を重視したり、それに従って行うような仕事や活動の領域

【既にあるルール等を効率的に運用することが好きなタイプ】

慣習的タイプの人は、反復継続した作業が好きなタイプです。ルールを守りながら、チームの輪を考えることを得意としています。どんな状況でも順応でき、協調的に行動できる、潤滑油のような特徴を持っています。几帳面で粘り強い反面、どちらかというと指示待ちになりがちで、自分から何かをするということはあまり得意ではない傾向があります。

【キーワード】
ルール チームの輪 反復継続 協調的 順応 几帳面 粘り強い 自制心

  • 事務的な仕事:一般事務
  • 規則的な仕事:警備、巡回
  • 正確さが求められる仕事:経理事務
  • 整理したり管理する仕事:文書整理、保管
  • 反復作業が多い仕事:編集、構成関係

→秘書、経理、電話オペレーター、キーパンチャー、受付など

自分が就いた仕事を「適職にする」

自分の関心の高そうな職業領域が分かったけれど、自分はそれとは別の職業領域の仕事を希望する場合もあります。

たとえば現実的領域(ものに関心が高い)に関心の高い人が、営業のような企業や社会的領域に属する仕事を担当する場合です。
この場合は、ものに関する関心と知識を生かし、豊富な製品知識を顧客に提供することにより、受注獲得し営業成績をあげて営業が立派に務まっている場合もあります。自分が就いた仕事を「適職にする」例です。

「就労した仕事を適職にしていく」

自分の持ち味を活かした仕事の仕方をすると仕事が楽しくなります!
関心の低い領域の仕事でも、自分の関心を活かした仕事の仕方をして道にすることもできます。

現実的(物に関心)

(営業)製品や物に詳しく、顧客の求める製品を的確に提案できる。
(アパレル販売)商品の詳しい材質・使いやすさ等を答えられる。

研究的(深く調べる)
(営業)顧客の最近の販売データを多面的・詳細に分析し今後の販売予測を提案する。
( アパレル販売)流行を年代毎・好み類型毎に徹底して調べておき、客層に応じた提案ができる。
(事務)仕事のながれやポイントを分析し、業務改善やマニュアル作成をする。

芸術的(アイデア)
(営業)顧客の事業内容をよく調べ、斬新な企画提案をする。
(事務)事務担当が一人なので、POPやHP作成等ルーティン以外のアイデアを出せる仕事する。

社会的(人に関心)
(営業)お客様とコミュニケーションを十分にとり、密接な関係により的確な情報をもらう。
(ホテル)お客様のお名前と顔・特徴を覚え、きめ細かいサービスをする(○○様いらっしゃいませ!)
(事務)営業の人など社内の人とコミュニケーションをとりながら書類を作成する。

企業的(事業に関心)
(営業)他社と連携し、顧客への幅広い企画提案をする。
(配ぜん人)チームワークよくサービスをし、担当テーブル以外のフォローもする。

慣習的(ルール重視)
(ルートセールス)顧客の売り場の陳列を手伝い、整然と買いやすい形に作りかえる。
(事務)ルーティンの仕事を迅速でミスなく確実にやり遂げる。

キャリア・アンカー

キャリア・アンカーとは、アメリカ合衆国の組織心理学者エドガー・シャインによって提唱された概念。

ある人物が自らのキャリアを選択する際に、最も大切な(どうしても犠牲にしたくない)価値観や欲求のこと、また、周囲が変化しても自己の内面で不動なもののことをいう。)

キャリア・アンカーの8つのタイプ

【専門・職能能力】
特定の仕事に高い才能と意欲を持ち、専門家として力を発揮することに満足と喜びを見いだす。たとえば「技術」「経理」などの専門分野のエキスパート

【全般管理能力】
組織の中で高い地位につき、人々をまとめたり、企業経営全般に求められる全般的な能力発揮をめざす。通常の組織で上昇志向のある人の多くがこれに該当する。たとえばゼネラルマネージャータイプ。

【自律・独立】
どんな仕事でも自分のやり方、マイベースで進めることを大切に考える
タイプ。たとえば組織に縛られず、独立をめざすフリーのコンサルタント

【保障・安定】
安全・確実を第一と考え、雇用の安定、収入の安定などゆったりとした気持ちで仕事を望むタイプ。たとえば公務員など。

【起業家的創造性】
企業や組織の創造する機会を求める。発明家・芸術家・起業家を目指す。
新しい創造性の発揮のためには、自律・独立も犠牲にすることもある。
たとえばベンチャービジネスの経営者など。

【奉仕・社会貢献】
人のためになり、世の中をよくしたいという価値観を重視するタイプ。
たとえば「医療」「介護」「社会福祉」「教育」などの分野。

【純粋な挑戦】
不可能と思えるような困難を乗り越えること。強敵に打ち勝つことなど絶えず挑戦していくことに意味を見いす。常に困難を探し求め、特定の仕事にこだわらない。たとえば「冒険家」タイプなど。

【生活様式】
仕事と家庭、仕事の時間と個人の時間、どちらも大切にしてバランスを考えていきたいタイプ。生活様式全般を調和させたいと考え、柔軟な人が多い。たとえばワーク・ライフバランスを重視する人など。

(エドガーHシャイン)

自分はどのアンカーを大事にしたいかを確認するとよいです。キャリア・アンカーは職業経験を経て培われていくものなので、職業経験の少ない人はなかなか決められないかもしれません(通常10年くらいの職業経験が必要)この他、「達成感」「人のためになる仕事」「地位」などのワードから選択する方法等もあります。

最後に

「就労した仕事を適職にしていく」は、自分の職業関心と異なる職業分野に就いた場合に、仕事の中での自分の興味・関心を活かした能力発揮の仕方を例示してありますので、参考にしてください。

検査と異なる職業領域だから必ずしもうまくいかないとは限りません。検査はあくまでも一つの参考程度に。

また一般的な適性検査は、数量的にどのような仕事が興味の範疇にあるかを調べ、人と仕事の適応をはかるものです。しかし個人的な気持ちにスポットをあてていないため、しばしば「求めている仕事と違う」と感じる場合もあります。

これに比べ、個人のエピソードから出てきた志望動機は、本人の独自のものです。
たとえば「こんな経験をしたので、ぜひこの仕事をしたい」(仕事の意味を追求しています)、という気持ちは本人の独自のもので適性検査よりもより具体的で強い意志を含んでいます。

つまり適性を理解したうえで、自分のしたい仕事(生きがいに感じられるもの)をするのが一番いいかもしれません。